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第44話 ポイント調整からの解放

某年某月某日
雑誌の広告で、ルーカスディストリビューターにも使える国産ポイントレストランジスターイグナイターを見つけた。新車からポイントが姿を決してかなりの年月が経って、とうとう古いイギリス車にも回春の機会が巡ってきたわけだ。しかし、ロータス用があるかどうかは書かれていないので、製造元に電話で問い合わせてみた。その会社の交換手に事情を話すと、技術部門の担当者に電話が繋がれた。彼の答えは、パルスの取りだし部分は、イギリス製のパーツを使っているので、もちろんロータスにも取付け可能とのこと。そして、トランジスターイグナイターに交換するとどの程度の効果があるか訪ねると、彼は非現実的な高回転域で性能をどうのこうの言うのではなく、アイドリングが全く変わりますと言っている。その変化は、ダラララ、ダラララとラフな回転が、ダーーーと均一な爆発になるそうだ。この説明に心を動かされて、購入を決めてしまった。この電話が営業の人間に繋がれて、8000回転以上でもミスファイヤーしませんなどの宣伝文句を聞かされら、そうはしなかっただろう。自分でこのシステムを作った技術者が自信を持って言うのだから、その効果を信用したのだ。しかし、必要なCDIユニット、コイル、エキスパンダーなるもの、赤外線トリガーなどを揃えると、値段もなかなかのものでこれで効果がなかったら詐欺である。

某年某月某日
手元にイグナイターセットが届く。大人用の弁当箱ほどのけっこうな大きなもで、なるべく涼しいところに取付けろと説明書に書かれているので、取付け位置を決めるのに苦労する。悩んだ結果、ぎっしり詰まったエンジンルームより室内の方が涼しそうなので、パッセンジャーのフットボックスの天井に逆さまに取付けた。ディストリビューターからポイントを外し、赤外線トリガーを全く同じ位置に取付け、ローターの下に赤外線ビームを遮るプロペラをはめ込み、指示どおりに全ての配線を繋ぎエンジンをかけると、彼の言っていたとおり、だらしなくふてくされているようだったアイドリングが、優等生の行進の様に奇麗に揃った爆発になった。パフォーマンスのほどはどうかとテストドライブに出てみたが、これがまた大満足で、かなりパワーも上がっているようだ。何より嬉しいのは、渋滞に巻き込まれた時、段々プラグがカブってきてストールしてしまうまうのではないかと心配する必要がなくなったことだ。

しかし、CDIユニットを室内に取付けたのは失敗だった。思いもよらず、このユニットは作動しているかぎり、ヒヨコの鳴き声のような音を発し続けるのだ。信号待ちをしていても、室内に10羽ヒヨコを放し飼いにしているように、ピヨピヨピヨピヨ鳴り続けている。走りだしてしまえば、今度はエンジン音でかき消されてしまうのだが、これにはたまらず、後日ユニットをエンジンルーム内の風当たりの良いところへ移動した。




 

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