第40話 クォリティーコントロール
某年某月某日
今日は僕の人生で始めての新車が納車される日だ。
その発端は、エランのローンもやっと終わって家族で出かけたアメリカ旅行中に、発売直後のフォードトーラスのステーションワゴンをディーラーの店先で見かけ、そのスタイルにコロっとまいってしまったことに始まる。新車などに心動かされることはほとんどないのに、今回はワイフとの意見も一致して、我家の2台目の車として購入を真剣に考えることになったのだ。個人輸入することによって、ディラーで販売している正規輸入車よりグレードが高いモデルを安く手に入ることが分かったら、友達2人がこの計画に賛同して、3台まとめて輸入することになった。もちろん個人輸入すると、いくら新車でも故障に対する保障などなくなってしまうが、昨今のアメ車はクォリティーコントロールが進んだと聞いていたので、そのリスクも低いだろうとの判断で実行に移したわけだ。そして、3カ月ほどで車が手元に届くはずだったが、カタログでムーンルーフ、革内装、スポーツサスペンションなど必要と思われるオプションを選んだのがまずかったのか、工場からロスアンジェルスのディーラーに届くまでに予想以上の時間がかかってしまった。どうやら本国でトーラスは、日本におけるコロナのような大衆車でしかなく、このようなオプションを注文する人はいないらしく、製作を後回しにされてしまったようだ。
輸入代行をお願いした中古車ディーラーから電話があり、今日車検が取れるというので約束の時間に車を引き取りに行った。
すると僕の車だけがまだ車検場がら戻っておらず、他の2台は何の問題もなくスムーズにナンバーがおりて、既に引き取られて行った後だった。僕の車は、アイドリングがラフなこと、ヘッドライトの片側が規定の明るさに達しないことが問題で、ひっかかってしまったそうだ。最終的に無理矢理ナンバーを下ろしてもらい、程なくして対面することができた。「どうぞ!」とキーを渡された新車は、確かにアイドリングがラフで、どうも1気筒死んでいるようである。ヘッドライトも左側だけがボンやりしている。これは自分が思い描いていた新車の納車風景とは、だいぶ違う光景になってしまった。とにかくナンバーは付いているので、家まで乗って帰って、早速フードを開けて原因究明の開始である。最初はインジェクションのノズルでも詰まっているのかと思ったが、まずは簡単なプラグからチェックしようと、プラグレンチ握った時には、これは僕の宿命なのだろうと悟りの境地に入っていた。プラグを一本一本チェックしたら案の定、火が飛んでいないのが見つかった。原因は、単なる不良品である。
ヘッドライトが暗い原因は、不良バルブか配線の問題かと思ったが、なんとライトユニットの反射鏡がメッキされておらず、クリーム色のプラスチックのままなのだ。これでどこがクォリティーコントロールがなされているんだ。まったく呆れてしまった。
それがまともに行なわれているのなら、こんな車がディーラーにデリバリーされるのはおかしいし、ましてユーザーに渡ってしまってはならないのだ。僕はこの一件で、アメリカでも当分の間は日本車の優位が続くことを確信した。
次の日に都内のフォードディーラーで純正プラグを買って交換したら、エンジンは6気筒に戻った。ヘッドランプは、取り替えた後に不良品を送り返すとの条件で、ロスアンジェルスのディーラーから無償で新品を送ってもらえることになった。
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