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第39話 片棒をかつぐ

某年某月某日

スプリントのM氏からエンジンを降ろすから手助けして欲しいと、お呼びがかかった。

ここに至った経緯は、彼のスプリントは買った時からクラッチに強化プレッシャープレートが入っていたようで、クラッチペダルが僕のエランの2倍ぐらい重かったのだが、遂にプレッシャープレートを押すクラッチフォークが耐えられなくなって、真ん中からポッキリ折れてしまったのだ。そして、この事件が起きてから重い腰を上げてエンジンを降ろしを決意するまで、既に3カ月が過ぎていた。彼はパティー好きだから、パティーを開くと称して人手を集め、一挙に作業を終えようという、まるで政治家の様な手段を使ったのだ。人手が必要なもう一つの理由は、彼マンションの地下駐車場にはチェーンブロックをかける場所がないので、取り外したエキゾーストパイプにワイヤーをかけ、篭屋のようにエンジンを吊り上げて降ろさなければならないからだ。

午後から何人かが集まって来てワイワイ作業が始まったが、車の下に潜ったりする汚れる作業はオーナーの仕事だから、外野は適当にお囃しを入れていればいいので、気楽なものである。

僕はお囃しを入れるのは好きだが、入れられるのは嫌いなので、一人でできる作業は極力一人でするようにしている。

エンジンにシリンダーヘッドが付いたままだと重く手持ち上がりそうにないので、ヘッドを外した後、ブロックにワイヤーをかけて、お猿の篭屋よろしく持ち上げた。明日は我が身の心境から、僕も片棒をかつがせてもらった。以前同じようにして持ち上げたことのあるホンダS800のエンジンは、さすがにアルミシリンダーの効果絶大で、ヘッドが付いていたにも係わらず、このフォードの鉄シリンダーブロックよりズーと軽かったことをパイプが食い込んだ肩をさすりながら思い出した。

エンジンが外れると真二つに折れたクラッチアームが、ベルハウジングの中から出てきた。M氏は、エンジンが降りたついでにエンジンオーバーホールをすることにしていたので、皆でよってたかってアっと言いう間にバラバラにしてしまった。
それっきりこのスプリントは、何年間もこの駐車場から1センチたりとも動いていない。




 

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