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第38話 ニューエラン

某年某月某日

初めて幕張メッセで開催される東京モーターショーにニューエランが展示されているというので、渋滞を避けて電車で出かけた。幕張駅で降りると、人の波が不気味なほど巨大な銀色の屋根のコンベンションセンターめがけて押し寄せていく。その駅前ではN自動車の労働組合の人達が、自社の車がいかに手抜きをして作られているかを告発するビラを配っていた。それに書かれていることと、エランを比べると、どこが手抜きなのだと言うようなことしか指摘していない。そして、そのビラの裏には「マイカー購入のワンポイントアドバイス」と称する新車購入のチェックポイントが説明されていて、それは、どうも自社の製品を薦めているように読み取ることもできる。こんなことにも組合運動の矛盾が露呈しているところがおかしかった。

会場に入ると、笑顔を振りまくコンパニオンを横目で見ながら、人込みをかき分けかき分け目指すは、ロータスブースのニューエランである。天井からつり下げられたロゴマークを頼りにやっと辿り着いて、人垣越しに目に飛び込んできたターンテーブルに載った黄色いボディーの印象は、写真で見るよりピチピチしていて張りのある質感にあふれてる。全体的な出来も、思っていたよりズーっと良さそうで思わずニンマリしてしまったが、15分ほどジーっと眺めていたら、だからどうしたという気分になってしまった。

なぜならユーノスロードスターが3台以上買えてしまう値段設定は、よほどの理由がある人以外に、この車を買おうと決断させることはできないからだ。これだけのお金を出してニューエランを買える人は、これ一台で全てを賄おうというのではなく、オモチャとして買うわけだから、それだったらユーノスでも十分ということになってしまう。一体どんな人がこの車を買うのだろう。ついにこのニューエランをドライブする自分の姿を想像できないまま、ブースを後にした。すると、そのとなりのブースには、アストンマーチンの新しいヴィラージュが展示されているではないか。これには目を奪われた。中年を通り越したころには、ニューエランではなく、こんな車に乗っていられる生活を目指そうと心に決めた。そんなになっても古いオリジナルエラン一台で四苦八苦しているのだけは、どうか避けたいものだ。

他に興味を惹かれる車がなかったので、早々に会場を後にしたが、帰りの電車の中でニューエランのことをもう一度良く考えてみたら、これはやはりオリジナルエランの延長線上にある現代のロータスエランであることに納得してしまった。なぜならコンセプトが不変だからである。オリジナルエランは、エンジン、トランスミッション、デフなどをフォードから供給してもらっていたのだから、ロータス自体がGMの傘下に入れば、それらがいすずから供給されるのは当然の成り行きだろう。オリジナルエランは、まったく専用のヘッドを作ったのに対して、ニューエランは、カムカバーにロータスのロゴが入るだけになってしまったのは少々寂しい気もするが、まあそれは許すとして、、、

また、現代の技術をもって軽量に作ることを主眼におけば、駆動方式がフロントドライブになるのも当然である。新機軸が取り入れられたサスペンション、鉄板細工のフレーム、グラスファイバーのボディー、大衆を寄せ付けない価格設定など、オリジナルエランの多くの個性を踏襲している。良く壊れるところまで引き継いでいないことを、望むばかりだ。

 

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