第37話 車とモデル
某年某月某日
この手の車を持っていると、雑誌の取材に使わせて欲しいとの依頼が時々飛び込んでくる。
先日は、MRという古い車をフィーチャーした発刊して間もない自動車雑誌が、自分でコツコツ車を直している人にフォーカスして記事にしたいとのことで、僕とM氏が取材されることになり、僕の自宅と彼のマンションで撮影が行なわれた。その記事が載った号は発行されたが、残念ながら数カ月後にその自動車雑誌は廃刊になってしまった。
今回は、赤いアルピーヌをYAから譲り受けたMT氏からの依頼で、最近発売になったユーノスロードスターとの比較記事のため車を貸してほしいとのことだった。
ずいぶんご無沙汰していたMT氏は、以前CM誌を発行している出版社にいたが、最近はフリーランスとして様々な雑誌の編集に係わっているとので、撮影は平日の箱根で行なわれることになった。
たまには平日の空いた箱根を走るのもよいだろうと、有給休暇を取って僕も撮影に参加することにした。もちろん、ユーノスロードスターがどんな車なのか非常に興味があったからでもある。それは、マツダが2座席オープンスポーツカーを作っているという噂が耳に入った時からだった。なぜそこまで強く興味をそそられ理由は、写真で見たニューエランの縦横比がアンバランスなスタイルに、ちょっと失望させられたからでもある。ユーノスロードスターも、発表会で見てきたNSからの報告で、MGBぐらいの大きさでエランより200キロも重いと聞いて、ちょっとガッカリしていた。今日はそれとエランを乗り比べられそうなので、このチャンスを逃す手はない。
ターンパイクを登り切ったレストエリアのパーキングで、2台並べて撮影が始まる。
ユーノスロードスターをパッと一見すると、そのスタイルは、全体のプロポーションからエランを安直にコピーしたように感じるが、細かなところまで見ていくと、歴代の様々なスポーツカーの魅力的な部分を取り込んでまとめ上げた苦心の跡が窺える。フロントフェンダーからドアへのアッパーエッジの流れは、フェラーリデイトナを感じてしまう。その後で峠道を運転させてもらったが、パフォーマンスも文句を付けるべきところは見当たらない。エランのように、ここが調子悪いとか、あそこを直さなくてはとか、心配無しに何も考えずにガソリンさえ入れればいつもこの車を楽しめるのだったら、こんなにありがたいことはないだろう。ましてエアコンまで効いてしまうのだから、この約20年間の技術の進歩には脱帽するしかない。その一方で、どんなに似通った車を作ろうとも、エランのエランでしか味わえない良さを最認識することができた。それがなければ、これまでの僕の苦労も無になってしまうわけで、無理やりエランの秀でているところを頭の中でリストアップしていた。
午後は場所を移し、女性のモデルさんが合流して、車と彼女が絡んだ写真の撮影が始まった。カメラマンはえつに入っているのか、モデルにかける声に段々熱を帯びて、これって自動車雑誌に使われる写真を撮影しているの?と疑いたくなるような雰囲気まで盛り上がった。まあ、モデルさんはちゃんと洋服を着ていたから大丈夫だろうと、掲載される雑誌のことをも確認しないまま帰ってきた。
そして後日、この写真を使ったカラーグラビアの自動車関連記事が載っている、ヌード満載の男性誌がMT氏から届いた。それを見た瞬間「アッやられた!」と思ったが、今更文句を付ける理由は見当たらなかった。
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