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第32話 イワシの缶詰めとテンプル

某年某月某日

古いイギリス車にとってオイル漏れは当たり前の事で、トラブルの内に入らないというのが定説であるが、それにしても近ごろの国産車がオイルを漏さないのには本当に感心させられる。

エランもイギリス車の御多分にもれず、至る所からしみ出てくる。毎日乗る前に量をチェックして極端に少なければ注ぎ足してやれば良いのだから、そんなに神経質になることはないし、サビ易いフレームの保護にもなると、トランクにはオイル缶を常備していた。しかし、ここ数週間前から症状が悪化してきた。オイルが滴り出ている場所は、トランスミッションのベルハウジングの前端とフライホイールをカバーする鉄板の隙間からなので、クランクシャフトのオイルシールが駄目になったのだろう。フライホイールの反対側のクラッチまでオイルが回って、クラッチが滑りだすのも時間の問題だろうから、そうなったらエンジンを降ろしてオイルシールを交換しようと腹を括っていた。

国産車がずらっと並ぶ共同住宅の駐車場に一台のイギリス車、その駐車場のアスファルトに点々と黒いシミができてきたら、これほど簡単な犯人探しはない。クラッチが滑りだすのが先か、誰かに文句を言われるのが先か、重い腰を上げるタイミングをはかっていたが、どちらもなかなかやってこない。それでもオイルジミを作り続けるのは気が引けるので、時間延ばしのためオイルが地面まで垂ないように対策を施すことにした。「固めるテンプル、吸い取るテンプル」とテレビでコマーシャルしている、使い終えた天プラ油を捨てる時に使う製品が有るのをご存じだろうが、それの吸い取る方を、アンチョビが入っている薄くて四角いカンの形に切って中に敷つめ、そのカンを針金でベルハウジングの先端にぶら下げたのである。要するに、クルマにオムツをしたわけで、これは効果バツグンで駐車場のシミは、これ以上増えなくなった。エランは車高が低いから、オムツをしていることを気づかれることもないわけだ。

しかし、これで問題は解決されたわけではなく、クラッチが滑りだすまでの延命行為でしかないわけだが、、、、




 

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