第27話 オーダーメイドホイール
某年某月某日
リヤにフロントより1/2インチ幅広い+2用のホイールを履いる僕のエランは、エランの持ち味である軽快な運動性能とルックスの両面をスポイルしているので、購入当初からいつかはどうにかしなくてはと、 To Doリストの上位に挙げた改善事項だった。
そんな思いが通じたのか、自動車雑誌を読んでいたら、エラン用のミニライトのコピーホイールが発売されるという商品紹介記事が載っているではないか。どんなものか確かめるため早速連絡先に電話をしてみると、電話口の相手は「基本的に受注生産なので、装着可能かどうか計測したいから、まず車を持ってきて欲しい。」とのこと、そんなことをやっていて商売になるのか、半信半疑のまま興味深々でかけてみることにした。
エランのオリジナルホイールは決して悪いデザインではないが、鉄板(それもかなり薄い)でできていることがどうも気に入らない。60年代でも、他の気合いの入ったスポーツカーはほとんどアルミホイールを履いていたのに、エランはどうして鉄板なんだろう。(コストを考えたら、鉄板になってしまったにちがいないのだが。)
とにかくエランは至る所に鉄が使われている。イタリア車だったらロゴの入ったカッコいいアルミオイルパンが、これ見よがしに使われていたりするのに、エランのそれは鉄板プレス製だし、トランスミッションケースだってアルミが常識の時代に、重い鉄の鋳物でできているのだ。それでも車重が700キロ程度に収まっているのは、グラスファイバーボディーの恩恵がどれだけ大きいかだ。
麻布一の橋のそばの路地を入った所にその会社はあった。会社の車庫の前でジャッキアップしたエランからホイールを外して、オフセットを計ったりブレーキキャリパーとのクリアランスを確認したりしている。計測の結果、既存の型を使って僕のエラン用のホイールが作れるとのこと、完成まで1カ月かかるそうだ。さすがに仮縫いに来いとは言われなかったが、まるでアルミホイールのオーダーメイドのようである。
アルミホイール業界は出入りが激しく、新しい会社ができては倒産し、又新しい会社ができるというようなことを繰り返していると聞いていたから、もし4本し買わなかったら、ホイールを縁石にぶつけたりして1本ダメにしてしまったりすると、もうこの会社がなくなってしまってスペアーが購入できず、残りの3本も使えなくなってしまうのではないかと、思い切って5本発注した。
しかし、その後この会社はミニライトのコピーホイールで結構メジャーになったし、まだホイールを沿石にぶつけるようなヘマもしていない。
某年某月某日
待ちかねていたホイールができあがる。さてタイヤをどうするかである。
このエランを買った時は、前輪175、後輪185のピレリCN36をオリジナルホイール(後輪は+2用の1/2インチワイドなホイール)に履いていた。その後、オーバーサイズのタイヤが、どうも大きすぎる靴を履いているようで足元がシャープに見えないので、古いイギリス車にはお似合いのダンロップSPスポーツの165-70-13に交換した。これを見たアルピーヌのYAには、「ずいぶんプリミティブなタイヤを履いたね。」とイヤミを言われてしまったが、同じアルピーヌにミシュランのZXを履いているNSは、「安いタイヤでいいんです!」と、称賛してくれた。彼の持論は、「この手のスポーツカーは、タイヤよりサスペンションが勝っているので、グリップの低いタイヤで充分だ!」とのことだった。でも、このタイヤに交換してフットワークは軽快になったがその反面、いつも爪先立っているようで安定せず、怖くて車を信じきったコーナリングができなくなってしまった。なんだかいつも細い線の上を神経質にトレースするようなコーナリングを要求されるのだ。とは言うものの、僕はこれがロータスのコーナリングなんだろうと信じて、怖い思いを甘んじて受けていた。なぜならそんな状態でおっかなびっくり走っていても、そこらの乗用車よりズーっと速いからだ。
ホイールを5本買ってタイヤも新品に替えるとなるとかなりの出費になるので、今回はそのままSPスポーツをアルミホイールに履かせることにした。その理由は、軽い車重に硬いタイヤではいつまで経ってもトレッドは減らず、タイヤの山がほとんど新品のまま残っていたからだ。
ミニライト風のホイールでルックスはかなり良くなったが、ステアリングを通して感じ取れるほどのハンドリングの向上は、全くと言ってよいほどなかった。
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