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第25話 ニューカマー

某年某月某日

NSから「知り合いのグラフィックデザイナーが、エランを欲しがっているんだけど、二人でうまくのせて買わしちゃおうぜ!」と電話がかかってきた。3人で落ち合う場所と時間を決めて、合流することになる。

このグラフィックデザイナーのM氏は若かりし頃、ポルシェ914-6で彼女と駈け落ちをしたことがある程のエンスー(?)だそうで、既にエランの購入を99%決めていた。だからほとんどお囃しの必要はなかったが、国内では限られた予算で出物を見つけるのは難しいから、イギリス本国を捜した方が良いのではないかという話で盛り上がる。

ここで、幼少時代をイギリスで過ごした友人Kに登場してもらい、僕が会員になっているイギリスのClub Lotusの会報に載っている広告などを元に、M氏の英国ロータス 中古車屋訪問先リストができ上がった。

そのトントン拍子にのせられたM氏は、数週間後、そのリストを携えてイギリスに旅発って行ったのだった。

そして、帰国予定の2週間が過ぎても一向に連絡がなく、結局、彼が帰ってきたのは4カ月も経ってからだった。

彼がイギリスで何をしていたか定かではないが、彼の地がいたく気に入ってしまい、帰れなくなってしまったのだそうだ。

某年某月某日

M氏が帰国してほどなくして、彼の注文した エランがイギリスから届いた。
そして車検が取れたから、ドライブがてら僕の家まで見せに来るとの電話があったのに何時間経っても一向に姿を現わさない。いくら道が混んでも、彼の家から1時間有れば充分なはずである。NSも同乗してくると言っていたので、何処かで道草でも食っているのだろうと鷹をくくっていたら、4時間近く経って冴えない排気音を響かせながらやってきた。何が起こったのかと問いただすと、首都高の江戸橋インターチェンジ手前から渋滞が始まり、プラグがかぶりだし、遂に中央車線で止ってしまったそうだ。合流地点なので4車線になっているため、そこを渡って路肩側にある非常電話をかけることもできず、誰かが助けてくれるまでの間、なんと高速道路上で記念撮影をしたりしていたそうだ。することもなくなったので駄目もとでキーを捻ってみたらエンジンが息を吹き返し、走り出したらまた渋滞で止ってしまい、今度はバッテリーも死んでしまって、しょうがないので首都高速を交替で押したとのこと。そうしたら工事車両の退出路があったので、その坂を下りながら押しがけをしたらエンジンが息を吹き返し、一般道を使ってやっとたどりついたとのことだった。

これはなんとも、彼と彼のエランの将来を暗示するようなできごとではないか。

彼のエランは、最後期型のスプリントで、お決まりのゴールドリーフカラーにペイントされ、オリジナルを保っている一見きれいな車だ。それでもM氏は「どうも試乗した車と違うようだ!あれはもっと良かった気がする。それにハードトップのお金も払ったのに、ソフトトップしか付いてこなかった。」としきりに頭を捻っている。「シャーシナンバーは、確認したの?」と聞くと、彼も その試乗の時がエランに乗るのが始めてで「舞い上がっていて、そんなことはスッカリ忘れていた。」とのこと、もう届いてしまったものは収めるしかなく、そして彼と彼のエランとの「愛と憎しみの日々」が始まったのだ。




 

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