第17話 プロの手際
某年某月某日
僕は子供の頃からなんでも中身を確認しないと安心できない性分で、ブリキの自動車を買ってもらえばボディーとシャーシを繋いでいるツメを起こしてボディーを外したりしていた。カートレースをしていたころも、エンジンオーバーホールは好きだった。
そして、エランを買った後も、どうしてもエンジンの中を一度見ておきたい欲求にかられるようになってしまった。
ブリキのオモチャで指を切ったり、元どうりに戻せなくなったオモチャもかなりの数あったような気がするが、エランのエンジンをバラして組み立てられなくなっても、そのままオモチャ箱にほっておくわけには行かないから、今回だけは掟を破ってプロに仕事を依頼して、その一部始終を横に付いて見せてもらうことにした。
S自動車サーヴィスでどこも壊れていないエンジンのシリンダーヘッドを外して、ヘッドガスケットの交換してもらい、中身のチェックとプロの仕事の肝所を盗もうと言う魂胆である。朝から押し掛けて作業を見せてもらったが、マジシャンの手さばきを見定めるのが難しいように、彼は手つきは、何も特別の事をしている様子はないから、真似のしようがない。そのかわり、工具の正しい使い方、一段落ごとに周囲を片付けながら作業を進める周辺整理がとても勉強になった。エンジンの中も特に問題はなさそうだから、思う存分回してもいいようだ。今回の授業料が無駄になってエンジンを触らなくてすむようなカーライフが送れればと思ったりもしたが、それには車種の選択を既に誤っていることに気付き、これで得られたノウハウを早く使ってみたい衝動に駆られた。エランに乗っているかぎり早晩その日がやってくることは、間違いない。
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