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第13話 時代にはその時代のリズムがある

某年某月某日

友人の家からの帰り道、首都高を流れより少し早いぐらいのスピードで左右に車線変更をしながら気持ちよく走っていると、いきなりサイレンと「左によって止りなさい!」の声が拡声器から聞こえてきた。この時運転していたのは、僕ではなくワイフである。

結婚する前に国産スポーツカーのマニュアルシフト、ノンパワーステアリングというのを毎日の足にしていた彼女にとってエランは、どの操作も軽くてオモチャのようで全く苦にならないのである。避難帯に車を止めるとパトカーから警官が歩み寄ってきて、僕の方に「免許証を見せなさい。」と言ってきた。「僕は運転していませんでした。」と言うと、最初は何をふざけているのだと言うような顔をしていたが、左ハンドルの車だとわかり、そちらに目をやると、暑さに備えた彼女のカッコウに驚いていた。因みに、エランがどれだけ暑いかと言うと、どんな炎天下でもこの車から降りると、熱風もそよ風のように涼しく感じられる程なのだ。

交通機動隊のお巡りさんは、捕まえた理由はスピード違反もあるが、車線変更の際にターンシグナルを出していなかったと言っている。ワイフは「ゼッタイに出していた!」と反論しているので、故障ではないかチェックしてみると、左右両方ちゃんと点滅するではないか。これで整備不良のキップは免れたが、どうして、彼らにはシグナルが見えなかったのだろう。彼女がパトカーの中に連れていかれている間に、いろいろ試してみると、重大なことを発見した。普通の車は、ターンシグナルのレバーをカッチンとONにしなくても、引っ掛かりに当たったところでランプが点灯し始める。しかし、60年代またはそれ以前に設計されたルーカスのパーツが使われているこのシステムは、レバーがカッチンと所定の位置に入って一泊あってから、やっとランプが点滅し始めるのである。エランの場合このタイミングでは、一旦となりのレーンに移ってから元のレーンに戻るぐらいのことは簡単にできてしまうのだ。だから、彼女はシグナルをレバーを行きたい方に倒して、車線変更をして、レバーを中立の位置に戻す動作を確実にしていたにもかかわらず、その間にランプは一度も点滅しなかったのである。

首都高では、一瞬だけターンシグナルをつけて車線変更することが常識のようになっている昨今、何とも時代の隔たりを感じさせてくれる発見だった。

パトカーから戻ってきた彼女は、スピード違反は許してもらえたが、安全運転義務違反のキップを貰っていた。ターンシグナルのシステムがのろまだから点灯していなかった旨を説明すると、彼女は憮然とした顔をして口をきかなくなってしまった。

昔はこんなのんびりとしたターンシグナルでもまかり通っていたのかと疑問を抱くと、無粋な車線変更などという行為をしなくてもすみそうなイギリスの田園風景が思い浮び、なんとなく納得させられてしまった。




 

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