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第1話 はじめに

このストーリーは、F1グランプリでロータスと熾烈な戦いを繰り広げた、フェラーリやB.R.M. のチーム監督が書いた本ではありません。

ただ、一台のロータスエランに翻弄されたオーナーの約10 年間の記録です。

古いイギリス車には、あちらを直せばこちらが壊れる「故障のモグラ叩き現象」がついて回ると言われますが、たった一台の車にこれだけ苦しめれたオーナーもいないだろうと思い、ワープロに向かいました。

僕がエランを購入するに当たって立てた前提条件は、故障しても修理屋さんに持って行って「直しといて!」で済せるのではなく、できる限り自分の力で修理するということでした。なぜ自分で直すか?それは、まともな修理ができるメカニックにお願いすると、普通の経済環境で暮らしている所謂サラリーマンには、よく壊れると評判の車を維持することが不可能だろうと予想したからです。エランのマーケット価格は、まともな仕事を持っている人であれば手が届くものですが、普通の車との大きな違いは、毎日の足として走らせ続けるのにかかるコストです。壊れるたびに修理屋さんのお世話になっていたら、莫大なお金が必要です。要するに、ゴルフクラブのセットは誰でも買えますが、それが使えなくなるまでコースに出てプレーできる人は、ほとんどいないのと同じことです。

最近の国産車の新車価格は段々高くなってきて、中古車市場のエランより高い車はゴロゴロしています。僕がエランを手に入れたのは、初代ソアラが発売になったころで、購入価格はその一番高いモデルとほとんど同じでした。何と言ってもソアラは、バブル時代への先駆けともいえるハイソカーの元祖ですから、それと比べるとエランは、小さくてみすぼらしく、エアコンなし、パワーと呼べるものは、誰もが意外に思うパワーウインドーしかついていないのです。軽自動車を一回り大きくしたぐらいの車にソアラ以上の価値を見いだすのは、誰から見てもヘソまがりの極致だったわけで、会社の同僚などは、口にはしませんでしたが、ぼくのことを、「なんてバカなやつなんだ」と思っていたことでしょう。

でも約10 年間を共に過ごしてみて確実に言えることは、あの時ソアラを買っていたら、こんなストーリーが書けるほどの経験は、絶対できなかったということです。失ったものはありません。得たものは、楽しい時間と多くの友達です。

そうです、古い車が市民権を得てきた昨今、この 10 年間の経験を古い車とのラブストーリーのワーストケースとして披露します。他人の白い目を無視できる方、友達を拝み倒してヘルプを頼める方、そして何よりも家族の理解が得られる方は、お好みの車を見つけて、このモグラ叩きゲームにどうぞチャレンジなさってください!


 

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